不純な理由で近づきました。
「一ノ宮くん。付きまとっていいですか?」
一ノ宮くんの表情が固まった。
と同時に聞こえた笑い声。
…………枢くんが笑ってる。
しかもお腹を抱えて爆笑しているんですけど。
「く、枢くん?」
「あっはははっ!!何今の!?"付きまとう"?
そんなの真っ正面から言ったの白崎さんが初めてだよっ!?」
更に笑う枢くんをどう対処すればいいのか分からず、一ノ宮くんに目を移す。
一ノ宮くんは呆れたように枢くんを見ていた。
仮にも友だちじゃないのか。
随分と冷めた視線で……
しばらくして落ち着いたのか、はぁ、と大きく息を吐いて枢くんは顔を上げた。
「あぁ……久しぶりに笑った」
目に浮かんだ涙を拭ってわたしを見た枢くん。
思いっきり顔を背けられたんですけど。失礼な。
「それでそれで?なんで恭に付きまといたいの?」
にやにやと向けられた笑顔に一瞬言葉をつまらせる。
枢くんのキャラってこんなんだったのか。
ちょっと驚きだ。
「えと、付きまといたいのは……仲良くなりたいから、でしょうか?」
「なぜ疑問形」
一ノ宮くんの鋭いツッコミに拍手を送りたい。
その声の素晴らしさにも。
「へぇ……じゃあ白崎さんは恭のことが好きなんだ」
「そう、ですね……
まだあまり一ノ宮くんのことを知らないし、性格とか分からないですけど、好きですかね」
主に声が。
というかむしろ声オンリー?
そんな失礼なことは言えないけど。
「あ、枢くんのことも好きですよ?
ただわたしは昨日の一ノ宮くんに一瞬で魅了されてしまって……」
それはもう自分でもびっくりするぐらいに。
青天の霹靂っていうのはこういうことを言うんだって実感しましたよ。