不純な理由で近づきました。
説明の中に確か大浴場のこともあった気がする。
大きくて、大浴場限定で健康とか美容にいい温泉があるんだとか。
「いいな……」
わたしも、行きたい気持ちはもちろんある。
でも、他の人がいっしょとなると……
兄さんや恭くんたちには大丈夫だと思うけど、他の人にメガネなしで会えるかと聞かれると、胸を張れる自信がない。
「……ここ、夜は遅くまで開いてるし、朝もやるの早いってさ」
「?」
なんの話だと首を傾げるわたし。
それに恭くんはふっと笑う。
「風呂のこと。
朝方なら人も少ないだろうし、六花でも行けるんじゃねぇの」
「あ……」
そ、っか……
確かに朝の早い時間帯なら人もいなさそう。
わたしでも、入れるだろうか。
………いや、何事も挑戦してみないと分からない。
ここに泊まっている間に、1回でいいから行ってみよう、とわたしは心の中で決意した。