不純な理由で近づきました。



そう思うのにはちゃんとワケがある。


だって……この服全て、結構いいお値段なブランドもの。


オシャレに興味がないわたしにだって分かるブランドだ。


どれだけ有名なのかは簡単に想像がつくだろう。


あぁ、そんな高級な服をこんなに無造作に並べるなんて……というかもはや投げ捨ててる。


思わずやめてと叫びたくなる光景だ。


……て、今はそこではなく。


これを着るなんて考えられない。


わたしからすれば大金を身につけているようなものなのですが。


そんな服を着て出歩いたり食事をするなんて、絶対に生きた心地がしない。



そうこうしているうちに話し合いは終わったらしく。



「じゃあ六花ちゃん」


「は、はい…」



思わず顔がひきつる。


自然にあとずさりしたものの、後ろにはわたしを逃がすまいと立っているイリアさん。


そして前には迫力満天の笑顔を浮かべたサユさん。


ユスラさんは……サユさんの後ろで明後日の方向を向いている。


抵抗虚しく、わたしが2人に捕まり、されるがままになったのは言うまでもない。







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