不純な理由で近づきました。



ナルちゃんもその頃を思い出したのか、クスッと小さく笑った。



兄さんとわたしとナルちゃんで遊ぶときは、大体が室内。


子供らしからず、みんな外で遊ぶよりも中で何かをしている方が好きだった。


そしてその何かの大半とはわたしのことをいじって遊ぶこと。


その大人気ない態度によく耐えられたな、わたし。



「オレやトモがこういう仕事に就いたのってさ、好きって理由もあるけど、実はりっちゃんにも理由があるんだよね」


「え?」



わたし?


初めて聞く話に思わず目を丸くする。



「小さいとき、オレらよくりっちゃんを着せ替え人形にしてたでしょ?

それで自分たちの手で人を綺麗にしたり、笑顔にしたりするのが嬉しくって。

それでトモがデザイン、オレがメイクで2人で仕事してんの」



トモには内緒だよ?と言われてわたしはコクリと頷いた。



そっか……2人にはそんな思いがあって仕事をしているんだ。


兄さん、ちゃんとまともなこと思ってしてたんだ。


今までアホとか思ってきてごめんなさい。



「はーい、りっちゃんできたよ」



どうぞ、と差し出された鏡を受け取ってわたしは中を覗きこんだ。







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