不純な理由で近づきました。
うんうん、と頷くわたしに対して枢くんも一ノ宮くんも訝しげな顔。
「……なぁ、なんで俺なんだ?」
「はい?」
その質問の意味が分からずにわたしは首を傾げる。
「普通に考えてみたら俺じゃなくてカインだろ」
つまり、どうして枢くんじゃなくて一ノ宮くんに付きまとうのか、ということ?
「そうですか?」
思い返してみると紳士的というか、優しかったのは枢くんだったような。
あぁいうのって女の子に喜ばれそう。
「確かに、恋に落ちるとしたら枢くんの方がありえるのかもしれませんね」
一ノ宮くんってクールというか無愛想というか。
そこがいいって言われてるみたいだけど。
「じゃあなんで俺?」
「なんでって…言ったじゃないですか。一瞬で魅了されたんです」
「何に?」
「声です」
「「………は?」」
あ、ハモると更に素晴らしく響く声。
息ピッタリだったなぁ。
「思いきって告白しますけど、実はわたし、声フェチなんです」
ここまできたら、と引かれるのを覚悟で言ってみた。
残念ながら2人からの反応がなかったので話を進める。
隠していてもどうせそのうちバレそうだし。
「あのとき、一瞬で一ノ宮くんの声に惹かれてしまって。
自分でも不思議なほどに強く、もっと一ノ宮くんの声を聞きたいって思ったんです」
嬉しいときの声
悲しいときの声
喜んだときの声
怒ってるときの声
一ノ宮くんの声はどんな風に響くのだろう?
知りたい、聞きたい……聞いていたい。