不純な理由で近づきました。
「はぁ……」
それにしても、本当に、どうしてナルちゃんには分かったんだろう。
わたしの頭に浮かんだのが恭くんだった、って……
不意に昨日のことが思い出されて、ジワリと頬が熱くなった。
「ここに、キスされたんだよね……」
ドキドキしながら自分の右手の甲を見つめる。
ここに、恭くんの唇が……って、わたし何考えてるんだろう!
これじゃあまるでどこぞの変態のようじゃないか。
でも…でも…あんな刺激的なシーン、忘れることなんてできないよ……っ
「六花?」
「きゃああぁっ!!?」
急に聞こえた声に思わず声をあげてしまった。
後ろからうぉっ、とわたしじゃない声が聞こえて。
って、この声は……
「きょ、うくん…」
な、なぜここに恭くんが?
ちょ、ちょっと待って。
いやだいぶ待って。
せめてあと5分待って。
どうしてこんなときに恭くんが来るんだ。
さっきまで恭くんに関する煩悩が湧いてきて仕方なかったのに、どうして本人が……
頭の中はいきなりのことに大パニック。
「あー、悪い。驚かせた?」
「え、あ、う、いえっ」
大丈夫ですっ、と思いっきり首を振る。
よかった、と笑う恭くんに、ドキリと心臓が跳ねた。