不純な理由で近づきました。



ドクドクと心臓が脈打って。


体温が急激に上がったような気がする。


あぁ、きっと昨日あんなことされていろいろ考えちゃったから……



(お願いだから、ヘンな煩悩をわたしの頭の中から消してっ)



と、心の中で叫んでみるものの。


……そんなことで消えたら苦労しないよね。




「そ、そういえば、恭くんはどうしてここに?」



ナルちゃんが帰ってくるわけでもなく、かと言って兄さんやカインくんたちといっしょにくるわけでもなく。


どうして恭くんだけがここにいるんだろう。



「あー、見風さんに呼ばれたんだけど」


「へ、ナルちゃんに?」



でもナルちゃんいない、と言おうと思ってハッとする。



もしかして……1番に恭くんに見せたいとかいうあの言葉、本気にしたのか?


あ、いや紛れもない本心ではあったんだけど。



でもね、ナルちゃん……物事にはタイミングというものがありまして。


どうしよう……今はそのタイミングが悪い。


そりゃもうすこぶる悪い。


何が悪いって、わたしの心臓にたいへんよろしくない。


この状況に耐えきれず、鼓動が速すぎて、息をするのが苦しく感じてしまう。







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