不純な理由で近づきました。



どうしよう…どうしよう……っ…



「六花、どうした?体調でも悪い?」



軽く俯いていたわたしの視界にひょこっと恭くんの顔が映る。


至近距離にあった綺麗な顔にわたしは息を飲み、恭くんは少し驚いたように目を見張っていた。



「う、わぁ!い、い、いまは見ないでくださいぃっ」



顔が熱くて仕方がない。


ついでに体も熱いし心臓が忙しなくて苦しい。


こんなに慌てるような、あたふたした落ちついてないわたしを見せるなんて恥ずかしい。


それに耐えきれず両手で顔を覆って思わずしゃがみこんだ。


このまま消えてなくなりたい……


と普段では考えられないほどのネガティブ思考になっていると、そっと手首を掴まれて。



「ひゃ…っ」


「………」



痛くない程度の力で手が顔から引き剥がされてしまった。


反射的にわたしは恭くんの顔を見上げて。



こ、これ、ちょっと近くない、ですか?


顔同士の距離が近いというか……それだけじゃなくて体の距離も近い。


まとめると近いです。



うわぁ、どうしよおぉ……っ


頭はすでにパニック状態であたふたしているにも関わらず、体は全くと言っていいほど動かない。






< 155 / 257 >

この作品をシェア

pagetop