不純な理由で近づきました。
「六花」
「は、はい」
ドキッと跳ねた心臓。
そのままドキドキと鼓動を刻みながら返事をすると、滑らかにわたしと恭くんの距離が縮む。
コツン、と額同士が軽く触れあって、お互いの吐息すら感じられる。
恥ずかしくて、見ていられなくて、耐えられそうもないのに、見つめてくる瞳を、そらしたいとは思わない。
恭くんも、そらさず真っ直ぐとわたしをその瞳に映してくる。
不意にふっ、と表情を崩して微笑む。
「まだ、誰のものにもなるなよ?」
どこか切なげに響いた、甘い声にほぅ、と聞き惚れる。
同時に胸の奥が何かに締め付けられるような感覚があって。
分かった?と聞いてくる恭くんに、わたしは熱にうかされたような気持ちになりながらもコクリと頷いた。