不純な理由で近づきました。
「ダメよイリア。それは六花ちゃんには似合ってないわ。六花ちゃんにはこういうのがいいのよ」
ペシリとイリアさんの手にしていた浴衣をはね除けて、サユさんが選んだのは黒地に白い牡丹と金の刺繍の美しい大人っぽい浴衣。
く、黒ってところではイリアさんのより着やすい気がするけど、なんと言うか、色気の感じられるそれも着るのは勇気が……
なんか服に着られてる感が否めない。
「いーえ!六花ちゃんにはこっちが似合うわ!」
「こっちよ」
「違うわ!サユは六花ちゃんの魅力を分かってないっ」
「あら、それはイリアじゃないの?」
「なんですって!」
バチバチと火花の散る2人にわたしはただあたふたするだけ。
こ、ここ一応お店なのですが……
他にお客さまがいないとはいえ、こんなに遠慮なく騒ぐとお店の迷惑になるのは確実。
もはやすでに営業妨害してるかも……お店の人も2人の勢いには口を挟めずに困惑気味だ。
「ユスラちゃん…」
あれ、止めなくてもいいの?とこっそり囁いてみるけど、
「あぁなったイリアちゃんとサユちゃんは何を言っても無駄ですから」
とサラリと返されてしまった。