不純な理由で近づきました。
ユスラちゃんはわたしの選んだ浴衣が見たいって言ってたよね。
でも3人には悪いと思うけど買うつもりは毛頭ない。洋服や諸々を買ってもらったのにそれ以上お世話になるというのは気が引ける。
お金もかなりかかってるはずだし……兄さんのお金で全額返済できるといいんだけど。
尚、そのお金はちゃんと全部メモして将来的には兄さんに返すから許してほしい。というか許させる。
1人店の中を歩きながら綺麗な浴衣を見て回る。
オシャレにはあまり興味はないけど、普通に何かの柄や絵の模様を見るのは素直に楽しいと思う。
そういえば小さい頃、家族みんなで夏祭りに行ったことがあった。
そのときも浴衣で母さんに着付けてもらったっけ。あのときは確か……
「あ、」
ピタリと1つの浴衣に視線が止まり、自然と足もその前で止まる。
誘われるままにその浴衣を手に取っていた。
落ちついた紺色の中に咲く鮮やかな朝顔。
ただそれだけのシンプルなデザインだったけど、それが逆に朝顔を強調していてとても綺麗だった。
「これ、あのとき着たのと似てる……」
あのときは朝顔じゃなくて紫陽花か何かだったかな?
記憶がぼんやりしていて分からないけど、でもやっぱり漠然と「似てるな」と思った。