不純な理由で近づきました。
そうと決まればナルちゃんを呼びに行こう、とお店を出たところで肩を叩かれた。
反射的に振り返ればそこにいたのは知らない人で思わず首を傾げた。
「あーごめんね、いきなり。びっくりさせた?」
「あ、いえ……」
大丈夫です、と言うと人懐っこそうに「よかった」と笑うその人。
明るい茶色の髪から覗くシルバーアクセがキラリと光った。
「俺ちょっと旅行しに来てんだけど、いっしょに来てたやつとはぐれちゃってさぁ。君もここの人じゃないでしょ?」
「え?あ、はい」
「あ、やっぱり?そっちも迷子?」
「いえ、わたしは、」
向こうのお店にいっしょに来ている人が、と言おうとしたけどそれを言う前に肩を抱かれてビクッと体が硬直した。
今日着ていたのがノースリーブの服だったからか直接伝わる相手の体温に背筋がゾクリと震える。
「あ、の、」
「ちょうどいいからいっしょに行こうよ!やっぱ知らないとこでの1人ってのは心細いからさぁ」
グイ、と寄せられる力に耐えきれずにフラリと足がよろつく。
「いえ、わたしっ」
とにかく1人じゃないです、と誤解を解こうと声をあげたときに肩に触れていた手が離れた。
それに安堵しながら振り返って目を見張った。
「人の連れに何してんの?」