不純な理由で近づきました。
茶髪の人の肩を掴みわたしから離し、代わりにわたしを抱き寄せる。
そのぬくもりと香り、その声にどうしようもなくホッとしてその服を掴んだ。
「あ、彼氏いたんだ?」
うわーごめんね、と言って慌てたようにどこかに行く後ろ姿を見送った。
「大丈夫か?」
「はい…ありがとうございます、恭くん」
ゆるゆると顔をあげて微笑めば、恭くんも安心したように笑みを浮かべた。
「でも、どうして恭くんがここに?」
「あー……偶然?」
「偶然?」
首を傾げたわたしに恭くんは苦笑し、わたしの手を引いて歩き出した。
その間恭くんの話してくれたことには、恭くんとカインくんも2人でこの辺りを観光していたらしく、たまたまナルちゃんと会ったらしい。
ナルちゃんはそれでわたしがいないことに気づいて、3人で辺りを探していたときに恭くんが偶然わたしを見つけたということで。
「とにかく見風さんに電話したら?」
「あ、うん」
うわ、ナルちゃんに心配かけちゃったな。一言声をかけて行くべきだった。