不純な理由で近づきました。
む、と剥れるわたしに恭くんは繋いでいた手の力を強くした。
「俺と2人は嫌?」
「っ!!」
耳元で甘く囁かれた声にビクリと肩が跳ねた。
もともとのセクシーなバリトンボイスと、その中に少し含まれた悲哀と懇願に心が震える。
思わず繋がれていない手を胸に当ててしまうぐらいの破壊力だった。
「六花?」
クスリと、吐息が耳をかする。
ズルい……
恭くんの声に弱いと自覚している自分としては、そんな声で言われてしまえば嫌だと思ってても反抗できるわけがない。
むしろ、もっとって……思ってしまう。
「も、…と……」
「ん?」
何?と笑い交じりで聞いてくる恭くんをおずおずと見上げる。
「もっと、その…いっしょに、いてもいい…?」
「………」
ハッ!わたしったらなんてことを言っているんだろう!
もっと、その声を聞きたいとは思ったけど「いっしょにいてもいい?」なんて厚かましいにもほどがある。
顔から火が出そうなぐらい恥ずかしくて思わず俯く。
「……じゃ、行こ」
恭くんの顔を見る勇気がなかったわたしはただ頷いて。
そして恭くんもそんなわたしを見ずに耳を赤くしていたことにわたしは気がつかなかった。