不純な理由で近づきました。
しばらく歩いて着いたところはこじんまりとした一軒のお店。
一目じゃなんのお店なのか分からずに首を傾げるわたしに、恭くんは小さく笑って手を引いて行く。
ガラリと引き戸を開けると奥から「いらっしゃいませー」という声が聞こえて。
導かれるがままに席についてメニューを渡されて初めて、ここが甘味処なんだと気づいた。
でも看板とか外に出てた?思い返してみるけどなかったような…わたしが気づかなかっただけかな。
「ここ、地元の人間しか知らないって有名なんだって」
「そうなんですか?」
「らしい」
地元の人に教えてもらった、とメニューを見る恭くんにわたしも手元のメニューに視線を落とした。
わらびもちわあんみつなどの夏のメニューはもちろん、手作りの和菓子も置いてある。
本格的なお抹茶もあるんだ。どれにしようか迷うなぁ。
なんだかここ、兄さんが好きそうかも。意外にこういうお饅頭とか好きだし。
「六花は決めた?」
「え?あ、んー、恭くんは何にしました?」
これ、と指したのは水羊羹とほうじ茶。
それもおいしそう。でも被るよりは違うものを頼んだ方がいいよね。
いつも兄さんとも違うのを頼んで分けあってるし。