不純な理由で近づきました。
「……こういうの、あんま他のやつにするなよ?」
「こういうの…?」
「(無意識って……)」
よく意味が分からずキョトンとするわたしに恭くんは手を離して自らの羊羹を一切れわたしの方に向けてきた。
「お返し」
「あ、ありがとうございます」
手で受け取って食べようとしたのに唇に触れるぐらい近づけられた水羊羹に、わたしは反射的に口を開いた。
ツルリとした感触に甘みが広がる。ほんの少しだけ柚子の風味がして爽やかな感じ。柚子の皮でも入れてるのかな。
「おいしいですね」
「……ならよかった」
なんだか恭くんが落胆して見えるような……どうしたんだろう。
今の一連のことに何かそういうことがあったかな、と考えてみたものの分かるわけもなく、わたしは首を傾げながらアイスを食べきった。