不純な理由で近づきました。
*さぁ、たくさん楽しみましょう
恭くんと旅館に帰ったときにはすでに4時頃で、わたしは帰って早々にイリアさんとナルちゃんに拉致された。
別にもう少し遅く行くのだからそんなに焦らなくても、と内心思ったけどみんなの迫力が……言葉を飲み込んでも当然だと思う。
そしてあれよあれよとされるがままにさせられて、現在なぜか上機嫌のナルちゃんと2人で一室に押し込められていた。
押し込められたと言うと語弊があるけど、無理矢理に近い形でこういう状況になっているのは否めない。
「りっちゃんなんか疲れてるー?」
ニコニコと笑うナルちゃんを恨めしげに見るけど当然効いていないみたいで、わたしはため息をこぼした。
「ナルちゃん知ってたでしょ?」
「ん?何をー?」
「分かってるくせに……浴衣のことだよ」
わたしが今着ている(というか着せられた)浴衣は見覚えのあるもので。
昨日の買い物の中でわたしが手に取り、イリアさんたちの手に渡ったあの朝顔の柄の入った浴衣だ。
あれからどうなったんだろうとは思ってたけど、まさか買っているなんて。
しかもご丁寧に浴衣だけじゃなくて帯に帯留め、下駄に巾着など道具一式を揃えたらしい。
……総勢金額を考えるだけで頭が痛い。
「んーまぁね。ユスちゃんたちに聞いてたから」