不純な理由で近づきました。



だから似合いそうなの買ったんだよ、とナルちゃんが取り出したものは先に青いトンボ玉の付いているシンプルな簪。


よく見ると中に細かい金色のラメが入っていてキラキラと朝日に輝く水面みたい。



「今日のりっちゃんは古きよき大和撫子だよー」


「大和撫子って……」



わたしはそんなにおしとやかじゃないんだけどな、と思ったけど言うのも疲れた。


さっきまでずっと椅子に座ってじっとしていて顔に何かいろいろされてたんだもん。


別にいいって言ったのに……ちょっと緊張しちゃったよ。慣れてないし。


ナルちゃんは「もっと力抜いて大丈夫だよー」と苦笑してたけど、人間慣れないことをされると自然と力が入ってしまう。さっきより緊張は解けたけど。



「じゃあ髪まとめるねー」


「うん」



後ろに回ったナルちゃんはわたしの髪をいじりながら鼻唄を口ずさむ。


メイクをしてるときも楽しそうだったし、この仕事が好きなんだなぁ。



「ねぇりっちゃん。きょーくんとのデートはどうだったー?」


「へ?」



デート?





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