不純な理由で近づきました。
「ふふっ、りっちゃん全然気づいてないねー」
「え、何を?」
キョトンとするわたしにナルちゃんは「んー?」と曖昧に返事をしながら手を動かしわたしの髪をまとめあげる。
きゅ、と頭がいい感じに引きつけられてなんだか気持ちがシャキッとした。
「りっちゃんはトモとかオレとかと食べさせあいしてるのが日常だったから気にしたことないと思うけど、」
「うん」
「それねー、いわゆる間接キスだよねー?」
「あ、そうだね」
考えてにればそうだけどそんなの今更だと思う。
それに兄さんはともかくナルちゃんは家族みたいなのもだし…
「それがどうしたの?」
もう動いていいよ、と言われて振り向くとニコニコと満面の笑みを浮かべたナルちゃんが。
な、なんだか素直に見惚れられないのはなぜだろう…
少し訝しげなわたしの頬をナルちゃんはちょこんと人差し指でつついて、
「じゃあ今のを踏まえた上でりっちゃんはきょーくんと食べさせあいできるー?」
こてんと悪戯げに笑った。