不純な理由で近づきました。




ジーっと見つめられて、居心地が……



「あの、」


「あっ、ごめんね?二人が連れてきた子だったから気になっちゃって」



ペロ、と舌を出して謝られて、わたしは曖昧に返事をすることしかできなかった。



「名前、聞いてもいいかな?あたしのことはアリサって呼んでね」



アリサ、さん……


なんか、名は体を表すってこういうことを言うんだなって感じ。



枢くんの従姉弟なだけあって、その瞳の色は綺麗なグレー。


髪の色は自然なブラウンで、かなり短いショート。


平均よりも高い身長に、見事なプロポーション。


モデルと言われても納得。


むしろ違和感なさすぎる。



「わたしは白崎 六花です」


「六花ちゃん!見た目だけじゃなくて名前もかわいいね!!」



…………?


一瞬幻聴が聞こえたような。



気のせい、だよね。


わたしみたいなのがかわいいなんて……


うん。気のせいだ。そうに違いない。



そう結論づけて、わたしはみんなのあとをついていって奥の個室に移動した。


飲み物や食べ物を注文して待っている間、わたしは一ノ宮くんと枢くんと和やかに話していた。



「じゃあ、アリサさんってここの店長さんなんですか?」


「そーそ。だからボクたちには結構融通きくんだ」


「へぇ……」



まだ二十二歳って言ってたっけ。


わたしとそんなに年は変わらないのに……アリサさん、尊敬しちゃうな。


不意にコンコン、とノックの音が聞こえて、扉からアリサさんが入ってきた。



「はぁいっ、おまたせ!!」


「ありがと、アリサ」



どういたしまして〜、と笑いながらアリサさんはテキパキと食べ物をテーブルに広げていく。


サラダ、ピザ、フライドポテト……


こんなに注文したっけ。


食べられる自信がないのですが。







< 21 / 257 >

この作品をシェア

pagetop