不純な理由で近づきました。
他の女の人とこんな風に触れ合っているところを想像しただけで理由もなく嫌だなんて思ってしまった。わたしだけでいいのにって……
ぎゅっと繋いでいた手に力が入る。
「六花?どうした?」
「……へ?あ!ご、ごめんなさいっ」
いつの間にか階段は下まで降りていて慌てて手を引っ込める。
なんで…どうしてあんなことを考えてしまったんだろう。恭くんが誰とどんなふうに付き合うのかなんてわたしには関係ないはずなのに。
それにまるで制限を加えるようなことを願ってしまったんだろう。わたしってこんな自己主張的なことを考える人間だったっけ。
「カ、カインくんたちが待ってますから早く行こっ」
ごまかすように笑みを浮かべて歩き出せば「…だな」と恭くんの低い声が聞こえてきて。
その声はどことなく不機嫌そうな響きを含んでいたけど、わたしは自分のことでいっぱいだったわたしは気づかなかった。