不純な理由で近づきました。
あとで兄さんのこと謝らないと、と考えているとユスラちゃんがイリアさんの肩を叩いていた。
うとうととしているイリアさんはユスラちゃんならわたしから離れるように言われているけど「やだぁ」とむくれているようで。
イリアさんってカインくんたちの中で一番年上なんだよね。なんだかそうは見えない…むしろ一番年下のユスラちゃんの方が頼り甲斐があるというか。
なんというか、しっかりしているよね。そういうわたしも(多分)兄さんよりしっかりしているし、末っ子が甘えん坊になるという話はあてにならないなぁ。
「仕方ないなぁ。お兄ちゃん」
ユスラちゃんが呼ぶと「ん?」とカインくんがこちらに気づく。やれやれとこっちに来る様子にちょっと笑ってしまった。
「ふふ、六花ちゃん、笑ってる方がかぁいい」
「へ?あ、ありがとうございます…?」
酔ってる時点で覚えてちるかわからないままお礼を言うとイリアさんはニッコリと笑って、つられてこっちも笑ってしまう。
「ふふふふ、かぁわいいー、食べちゃいたぁい」
うふふふ、と変わらず楽しそうに笑っている姿に「笑い上戸なのかな」と考えて見ていると「いただきまぁす」とイリアさんの顔が近づいてきてはむっと唇が食べられた。
「あ、」
「えっ」
「あら」
なんて間抜けな声とひゅう、なんて口笛が聞こえてきて。
わたしは近すぎるイリアさんの綺麗な顔を見つめながら硬直していた。
はむはむと何回か啄ばんだあとに離れてふにゃりと笑ったイリアさんがこてんと寝てしまうまでわたしは呆気にとられて動くことができなかった。