不純な理由で近づきました。
*夜空に咲いた花の名前は…



カラコロと下駄の鳴る音がする。少し苦しそうな息づかいとドクンドクンと脈打つ心臓の音が耳で響く。


そろそろ苦しくなってきて足を止めると、少し離れたところに人の騒めく音が聞こえた。


とにかくあの場所から離れたくて走ってきちゃったけど、屋台の通りにまで戻っちゃうなんてどれだけ走ったんだろう。


はぁ、と乱れた息を整えながら大きく息を吐いた。


落ち着くと思い浮かんでしまうことはさっきのことで。相手は酔ってて何も覚えていないのかもしれないけど……



「か、顔合わせられないよ…」



火照る頰に手を当ててぎゅっと目を瞑る。


……恭くんはどう思ったかな。自分のことでいっぱいいっぱいでそこまで気がまわらなかったけど、恭くんはさっきのを見て何か感じただろうか。


ほんの少しだけ絡んだ視線。わたしはあの時なんて思った?何を想像した?


瞼の裏に恭くんの顔が浮かぶ。


綺麗な肌にアッシュブラウンの髪が額にかかっていて、伏せた切れ長の目はどこか色っぽく、薄い唇は男の人っぽくてそこから紡がれる声は体が痺れるぐらい甘くセクシーで、まるで麻薬みたいに依存してしまいそう。


あの声で名前を囁かれて触れられたら……





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