不純な理由で近づきました。
もう本当に恥ずかしくて俯いていると「いやいや彼女かわいいわー」と言われて必死に否定しておいた。
「つーかそこまで否定されたら逆に疑うよ?」
「えっ」
ケラケラと笑いながらそう言ってわたしを見つめる瞳はなんだか楽しそうだ。そういう視線はなんというかあんまり慣れない。
でもそれよりもあなたの腕の中にいる人を解放してあげた方がいいんじゃないだろうかと気になってしまう。
でも気になってるだけで口に出せないわたし…小心者ですみません。
「でも、本当に彼とは、その、違くて…」
「でも好きでしょ?」
もごもごとしながら煮え切らない言葉を返すわたしに対してアッサリバッサリと言ってくる人にポカーンとした。
わたしがそんな状態で固まっててもニヤニヤと何が楽しいのかわからないけど目の前で話す人たちだけどその会話は全くと言っていいほど耳に入ってなくて。
ただぐるぐると一番最初の「好きでしょ?」という確信に満ちた言葉が頭の中で回っていた。
トクン、トクンと心臓が震える。ここにはいないのに耳の奥で「六花」とあの甘い声で呼ばれたような気がした。
繋いだ手のひら、涙を拭ってくれたときの指先、抱きしめてくれたときの力強さ、触れた唇…全部が全部、恭くんのことでいっぱいになる。
そっか…わたしは………