不純な理由で近づきました。



「おーい、聞こえてる?」



ハッとしたときには3つの顔がわたしを覗き込んでいて驚きから思わず仰け反ってしまった。



「あ、帰ってきたね。大丈夫?」


「へ?あ、はい」



すみませんとこぼせば気にしないでいいと笑ってくれたのでホッとした。



「それよりほんとに1人じゃないよね?噂の彼氏くんは?」


「だ、だから彼氏じゃなくてですね?あー、うー…一応土手の方にいます」



この様子では今わたしが何を言ったところで聞いてもらえないだろうと諦めてそう言うと暇だからとそこまで連れて行ってくれるという。


さすがに申し訳なくて断ったけど昼に怖がらせたお詫びだと言われてしまえば断れるわけもなく、おずおずとお願いすることにした。


途中屋台に寄ったりして話しながら土手の方に歩いていく。3人ともみんな優しい人でいつの間にか怖いなんて感情を忘れて話せていた。


これも恭くんたちと一緒にいるようになったからかな。トラウマの克服、みたいな。だったらちょっとだけ嬉しいかもしれない。


ふふ、と笑みをこぼせば不思議そうな顔をされたけど曖昧にごまかしてわたしは音を立てながら足を進める。





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