不純な理由で近づきました。
かなり土手の方に近づいてそれとともに人も多くなってくる。気を抜けばそのまま流されてしまいそうだ。
「んー、人多いね。土手ってあっちのほう?って大丈夫っ?」
「す、すみませ、」
人に挟まれてあたふたとしているとそれに気づいてわたしを引っ張ってくれてわたしはその人の胸の中にいた。
あとの2人が「セクハラー」「へんたーい」とからかっていて「うるさい!」とちょっと怒っている姿になんだか兄さんとナルちゃんを思い出す。
ふわりと香るのはこの人のつけている香水だろうか。いい匂いだとは思うものの嗅ぎ慣れないもので少し戸惑う。
えっと、恭くんたちがいた方はどっちだったっけ、と顔を上げたと同時にわたしはグイッと引っ張られて後ろから誰かに抱きしめられた。
びっくりして目を見開いている3人の姿が見えたけど一番に驚いたのはきっとわたしだと思う。急な展開について行けず頭も体も活動を停止していて。
にも関わらず安心するぬくもりと香りに頰が熱を持って心臓がドキドキと鳴った。
「あ、の、」
「六花、ふらつきすぎ」
「う、ごめんなさい…」
自覚があるだけに素直に謝ると「わかればいい」と優しい声がしてわたしは振り返った。