不純な理由で近づきました。



思ったよりも近い距離にあった恭くんの顔に思わず息を飲む。


少し乱れた髪と不規則な呼吸が頰にかかって、それだけわたしのことを探してくれたんだと思うと不謹慎だけど嬉しい。



「あ、昼の彼氏くんじゃん!」



今気づいたとばかりに声を上げる人に恭くんは心なしか冷たい視線を向ける。雰囲気もちょっと怖い気が……


ぎゅ、と更に強く恭くんの手がわたしを抱き寄せることにドキドキした。



「ダメじゃん彼女1人にしたらー!見つけたのが俺だったからよかったものを他の野郎に見つかってたらこんなかわいい子一発で林に連れ込まれてあーんなことやこーんなこと、」


「お前もう黙れ」



ペシリと軽く頭を叩くと「すみません」と苦笑交じりに一番大人な対応をしてくれた人が謝る。



「こいつ軽くてチャラいのが通常運転でそれをアイデンティティーにしてるようなやつなんで許してやって下さい。悪いやつではないんで」


「…軽くてチャラいんなら十分に危ないと思うんだけど」



違いない、と恐らくは全員が思っただろう。苦笑しながらも「それじゃ」とお昼に会った人たちはそのまま背を向けて行ってしまった。





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