不純な理由で近づきました。
お昼に会ったときはびっくりして怖くて仕方なかったけど、ちゃんと話してみれば悪い人でも怖い人でもなくてちゃんと話せていた。
わたしが怖いって思い込んでいただけで、実際は全然怖くなかった。わたしはわたしの世界を自分で狭めてしまっていたのかなって今日のことでそう思う。
「ほら、行くぞ六花」
右手を恭くんの手のひらに包まれてわたしは歩き出す。
トクントクン、と心臓が鼓動を刻んでその存在が主張される。慣れないけど、どこか心地いい。
「ねぇ、恭くん」
「ん?」
浴衣で歩きにくいのに加えて人が多いためはぐれないようにしっかりと手を繋いで歩いて行く。
わたしの歩調に合わせてくれるさりげない優しさにまた胸が甘く締め付けられた。
「わたし…わたし自身で世界はこういうものだって決めつけていた気がするの」
ちゃんと自分の目でしっかり見据えれば世界はもっと優しさとか思いやりとか、そういう温かなものであふれているんしゃないだろうか。
わたしは小さな時のあのことがきっかけで世界と自分の居場所を違うものだと線引きしてしまった。
それで怖いことからは逃げられたけど、同時に世界にあふれている優しさとかそういうものに背を向けてしまったのだと思う。