不純な理由で近づきました。
*できることからしたいんです
あの旅行から帰ってきたあと、わたしと言えば恭くんへの自覚した思いで悶々としていた。恭くんのことを考えるだけでドキドキして胸ががゅーっと締め付けられる。
でもこの苦しさは嫌いじゃなくて…本とかテレビとかで見ていた恋というものが自分の身に降りかかることになるとは、なんというか……うん。
「うーっ」
枕に顔を埋めてパタパタと足をばたつかせる。
照れ臭い。くすぐったい。恥ずかしい。こんな感情が自分のなかったにあったなんて初めて知った。
「恭くんと会ってから初めて知ることがいっぱいだよ」
ペチペチと頰も叩いて頰の熱を冷ます。冷ますというよりも誤魔化すと言った方が正しいかもしれないけど。
静かだった部屋の中に音楽が流れて発信源だったケータイを取るとそこに表示されていた名前に手のひらからポトリとケータイが落ちた。
いっしゅん呆けたあとにハッとして慌ててそれを拾い一度深呼吸してから通話ボタンを押すと「もしもし?」と聞こえた声。
「今大丈夫?」
「う、うん、大丈夫。どうしたの?恭くん」
ドキドキと緊張しすぎて自分の声が震えているような気がする。電話から聞こえてくるセクシーなバリトンボイスに気を抜けば溺れてしまいそうだった。