不純な理由で近づきました。



「兄さん、お帰りなさい」


「おぉ!ほらっ、六花の食べたがっていたアップルパ、イ…」



パッと振り返った兄さんはわたしと目が合うなりポカーンと口を開けて固まった。


アップルパイ、テーブルの上に置いた後でよかったね。今持ってたら恐らく、いや確実に床に落としていたと思う。



「り、六花、髪……」


「切ってみたんだけど…変、かな」



まだこの前髪に慣れない。でもそのうち慣れるようになりたいと思う。それがいつになるのかはまだわからないけど…


でもきっと大丈夫だって今のわたしは素直にそう思える。あ、でもその前に変って言われたらへこむな。


恐る恐る伺うように兄さんを見上げると。



「まさか!すっげぇ似合ってるから!」



むぎゅーっと前から勢いよく抱きついてきた兄さんに一瞬息ができなくなった。く苦しい…


でも、と少し目線をあげれば嬉しそうに頰を緩ませている兄さんがいて、ちょっとでも心配事を減らせるようになったのかなとわたしもちょっとだけ嬉しくなった。





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