不純な理由で近づきました。



「大丈夫か?」



ちょっと落ち着いた頃を見計らって声をかけてくれた恭くんに頷きを返す。


怒った声の感じではないことに安心しながら顔を上げて、今日初めてまっすぐに見た恭くんの姿にきゅん、と胸が苦しくなった。



「お、遅くなってごめんなさい…」


「や、そんなに遅れてないし気にしてない」


「そう、ですか」



よかったと緊張が緩んで体から力が少し抜ける。


好きだと自覚したからなのか、こういう些細な優しさにもぎゅうっと胸が甘く締め付けられてしまう。


苦しいけど、嫌じゃない。むしろ好きな苦しさというか、嬉しいというか。恋ってすごいなとしみじみ思う。



「今日の格好…」



ぽつりと思わず漏れたというような恭くんの言葉にドキリ。



「へ、変ですかっ?」



思わず食いついてしまったもののずっと不安に思っていたので仕方ないと思う。これでも自分なりにお洒落したつもりだったのだけど。


初めて2人っきりで出かけるってどういう服を着ればいいのかわからなくて、できるだけ普段通り…ではないけど、気合いを入れているように見えないような格好というか、なんというか。


ギンガムチェックのシャツと涼やかなロングのチュールスカートに、髪はポニーテールにしてシュシュをつけている。え、これ気合い入ってたのかな?どうなの?!




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