不純な理由で近づきました。
そわそわと斜めに分けた前髪を意味なく触る。こ、個人的にはそこまでおかしいつもりはなかったけど…や、やっぱりパンツスタイルにすればよかった…
心の中で羞恥と後悔に苛まれていると「いや、」と声が降ってきて視線を上げる。
「ちょっといつもと雰囲気違うからびっくりした」
ほんのりと照れたように口元に手を当てる恭くんに下がっていた気分が一気に上昇した。こ、心なしか体温まで上がったような…我ながらこんなことで期限が治るとは単純だなぁと思う。
自然と表情が緩んで手で誤魔化しているとおもむろに恭くんの手が伸びてポニーテールにしていたわたしの髪に触れる。
「髪、上げてるのもかわいいな」
甘い言葉を吐いてするりと一束掬ってキスを落とす恭くんに旅行した時のホテルでされたことを思い出してカアァ、と顔が熱くなった。
じ、自覚するとさらに恥ずかしい。でもちょっとというかだいぶというか、少なからず嬉しかったりするから困ってしまう。
軽くうつむくわたしに恭くんはクスリと小さな笑みをこぼしてやさしく頭を撫でる。
「そろそろ電車来るし行くか」
ん、と手を差し出した恭くんとその手を見比べておずおずと自分のを重ねると躊躇いもなく握り返してくる大きな手のひらに否応なく胸が甘く締め付けられた。