不純な理由で近づきました。



そういえばどこに行くのか聞いてなかったな、とふと頭に浮かぶもののすぐにまぁいいかと意識を今に向ける。


恭くんが連れて行ってくれるところならきっと楽しいから。いつも新しい世界をわたしに見せてくれる恭くんだから。


繋がれている手を見て自然に笑みが浮かんでいた。


15分ほど電車に揺られてから降りて、恭くんに連れられるままに歩いていく。その間わたしといえば見たことのない街並みにきょろきょろと視線をさまよわせていた。


こんなところあったんだなぁ。滅多なことじゃ知らない町で降りたりしないから新鮮。あ、あの雑貨屋さんかわいいな。


わくわくと子どもみたいに見ているとクスクスと隣から聞こえてくる笑い声。



「六花、目輝きすぎ」


「えっ」



そんなに?!と驚くけど確かにそんな感じに見ていた自分がいたのも否めない。


恥ずかしさから恭くんの視界から逃げるようにうつむいてみるもののおそらくはおまり効果はなくて。


うぅ、と内心羞恥で悶えていればふ、と耳元に感じるかすかな風。



「あとで一緒に見に行こうな」



「っ、…」



甘く、低く、誘うようなバリトンボイスが心が揺さぶられ脳が痺れる。この声にわたしが弱いの知ってるはずなのに…



「っ~、反則ですっ!」


「ふはっ、じゃあ行かない?」


「うっ…行きたいです」



最終的にこんな風に負けちゃう会話もわたしが恭くんを好きだから?惚れたもの負け…まさにその通り。昔の経験者は語るとは言ったものだ。





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