不純な理由で近づきました。




あ、そうだ〜、と言う枢くんの声でわたしは顔を上げた。



「どうした?」


「ほら、せっかく友達になったんだし、白崎さんのこと六花ちゃんって呼んでいいかな?」


「女は名前で呼ばないんじゃなかったのか?」


「友達に他人行儀なんてなんかヘンじゃん」



それに、と枢くんはわたしの顔を見つめる。


なんだろ、さっき食べたピザのチーズでも付いてるのかな。


密かに慌てるわたしに対し、枢くんはニコ、と笑った。



「白崎さんはボクの恋愛対象には入らないから」



だから大丈夫、とポテトを口に運びながら言う枢くん。



……これは怒るところなのかよかったと喜ぶところなのか。


判断に困るところだな。


一ノ宮くんもどう反応したらいいのか分からない感じで、少しだけ眉を下げていた。


そんな顔でもかっこよく見えてしまうのだからイケメンって得だと思う。



「いいですよ、名前で呼んでくれれば」


「あ、本当?じゃあボクのこともカインでいいよ。恭もね」


「俺もか」


「え、何嫌なの?」


「嫌っていうか……」



言い争にくいのか、しばらく迷っていたようだけど一ノ宮くんは最終的になんでもないと言った。


そう言われると気になるっていうのが人のサガ。


覚えてたらあとでこっそり教えてもらおう。


夜も近くなり、わたしたちは揃ってお店を出た。


このとき初めて知ったけど、一ノ宮くんとカインくんはともかく、わたしも意外と家が近かった。びっくりだ。


三人で駅に向かっているとカインくんがケータイを取り出した。


どうやらメールがあったようで。



「…………はぁ」


「カイン、またか?」


「うん、また」



…………何が?






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