不純な理由で近づきました。
慌ててあわあわするるやら公開してどんよりするやらと内心忙しいわたしなんてお見通しなのかクスクスと面白そうに笑って恭くんは手を伸ばす。
するり、と長い髪に触れたかと思えばくいっと後頭部に回されて恭くんの腕の中。
「俺の誕生日、覚えてて。来年は期待してるから」
耳元で甘く囁く恭くんの声。ポニーテールにしていたのでいつもは髪に隠れている耳にいつもよりもずっと明瞭に腰が砕けてしまいそうなバリトンボイスが届く。は、破壊力がすごい…っ
声も出せずにこくこくとかすかに頷くとふ、と小さく笑う声がして。ちゅっ、という軽い音と柔らかい感触にカチンと固まった。だ、だっ、い、いま、耳になんか…っ!!
微動だにしないわたしに対して恭くんはゆるゆると手を動かしてそっとわたしの頬に触れる。いつもより火照っているからなのかその体温の低い手が気持ちよくて。
額同士がくっつきそうなくらい近い距離で目が合う。ドキドキと主張する心臓の音がうるさくて、目をそらしたいと思うのに魅入られたように話せなくて余計にドキドキする。
「六花、」
柔らかく、妖艶に、甘い声と笑みを浮かべる恭くんの吐息が感じられて何かに誘われるように自然と目を瞑った。
「あーっ、六花あぁぁっ!!!」
ハッとしたようにお互い体を離す。
だだだだー、とこっちに向かってくるのは案の定兄さんでその顔はかなり怖い。そしてその後ろには呆れたように笑うナルちゃんがいた。
「あの2人がいるなら安心か、」
「え?」
「じゃあまた」
「へっ」