不純な理由で近づきました。
背を向ける恭くんに呼び止めようとしたがそれより先に兄さんにタックル…もとい抱き付かれて「ゔっ」と苦しげな声が漏れる。スピードも相まってその攻撃力は無視できないほどのダメージだった。
ぐらぐらと兄さんに「どういうことだー!」と揺さぶられている間に恭くんの姿は完全に見えなくなってしまってわたしはがっくりと肩を落とした。
あのあと兄さんに問い詰められるがなんとか交わして帰宅して逃げるようにお風呂場へ向かう。兄さんから逃げるのももちろんあったけど、わたしもわたしで整理したかったというか…
今もまだじんじんしている耳に触れるとあのときのことを思い出して、そのあとの優しい目とか触れ方とか…最後の雰囲気とか、全部全部思い出してしまって。
恭くん、なに、しようとおもったんだろう…あのときわたし自然と目を閉じていた。もしかして期待してた、のかな。
そっと無意識のうちに唇をなぞる。わたしだけドキドキして、そわそわして、しゅんってしたりもして…
「ずるい…」
思わずこぼれてしまった言葉は恨みがましそうで拗ねているようにも聞こえて。だけどあまえるような響きもあって…そんな自分を自覚してさらに顔が熱くなった。