不純な理由で近づきました。
まぁ、確かに二人ともかっこいいよね。
それは分かるわ。
でも、それより気になってしまうのは……
「おはよう。通れないからごめんねー」
少し困ったような響きを持つ枢くんの声が聞こえてきて、わたしは思わず目を閉じて聞き惚れる。
あぁ……いつ聞いても癒されるテノールボイス。
これだけで今日一日頑張れる気がする。
うっとりと一通り聞いてから目を開けた。
……皆さんお気づきだろうか。
そう、わたし、実は声フェチだったりする。
人と初めて会うとき、何よりも一番に声に注目、もとい注耳してしまう。
だから容姿にあまり関心がないんだよね。
これがいいのか悪いのか……まぁ今更直すつもりもないけど。
ガラリ、という音と一緒に入ってきたのは、さっきまで外で女子に囲まれていた二人。
微かに教室が色めきだったのは、わたしの気のせいではないと思う。
実際、数人の女子が二人っもとへ行ってるし。
多分そこそこに容姿に自信があるんだろうな。
甘ったれた猫なで声で「おはよぉ(はーと)」と言っている。
せっかく朝から枢くんの声で癒されてるのに、いつもこれで気分が落ちるんだよね……
仕方ないといえばそうなんだけど。
こぼれそうになるため息をなんとか飲み込む。
あ、余談ではあるけど、わたしは人の容姿を気にしないせいか、自分のことにも無頓着らしい。
これは兄に言われたことである。