不純な理由で近づきました。




「ギリギリだねー」



ふあ、とあくびまじりのナルちゃんの声に兄さんは頭を抱えた。



「んじゃ、行くわっ」


「うん。いってらっしゃい」


「六花、弁当テーブルの上な!」


「りっちゃん、いってきまーす」



慌てて出ていく兄さんとその後ろをのんびりとついていくナルちゃん。


対照的な二人に笑みがこぼれる。



そして二人を見送ってから、わたしも学校に向かった。











――――――――――――――――――
――――




いつものように自分の席に座って本を取り出す。


この本ももうすぐで終わるな……


今日は兄さんの帰りも遅いみたいだし、ちょっとぐらい遅くなっても大丈夫だよね。


お気に入りの古本屋さんにでも寄って帰ろうかな。


何か面白い本が増えてるといいけど。


ちょうど本を読み終わり、カバンにしまう。


と同時に外から恒例の声が聞こえてきた。


この無駄に高い声……いつ聞いてもいい気分はしないなぁ。


その声を遮断するように音楽を聴くイヤホンを取り出す。


流れてくるのはクラシック音楽。


朝から、しかも学校で素を見せるのは遠慮したいので。


声フェチだって声の入っていない音楽は聴くんだ。


兄さんにそう言ったときは笑われた。それって差別だと思う。


声フェチは音楽を聞いちゃダメなのか。


目を閉じて音楽を聴いていると、不意に肩を叩かれて。


横を見てびっくり。



「おはよ、六花ちゃん」


「……おはよう、ございます」



イヤホンをとって、思わずポカーンとした顔でそう言った。


カインくんはニッコリと笑ってから自分の席にいった。






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