不純な理由で近づきました。




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「はい、ここまで」



チャイムの音を合図に、先生が授業の終わりを告げる。


わたしはお弁当を持って言われた通り空き教室に向かった。


カギを持っているのは多分わたしだけだし、待たせるのは申し訳ないしね。


一応、誰も周りにいないことを確認してから教室に入る。



……昨日は先に食べ始めてたけど、待ってた方がいいのかな。


わたしは誘われた側だし。



「とりあえず五分くらい待ってみよう」



それなら残りの時間でも食べられるし。


ちょこん、と床に座って壁にもたれる。



あぁ……静かだなぁ。


あのうるさい声で溢れている教室より、静かなここの方がよっぽど居心地がいい。


それでも教室にいるのはカインくんの声が聞けるからだったりして。


本音を言えば恭くんにも話してもらいたいんだけどね。


そうなるにはこれからどれだけ仲良くなれるかどうかによるな。


つまりはわたしの努力次第。


今さらながらに人づきあいはちゃんとしておくべきだったと思う。


距離感がいまいち分からないんだよね……


ため息がもれそうになったときにドアが開いてそこに意識が向く。



「あ、六花ちゃん。やっぱりもう来てたんだ」



遅くなってごめんね、と言って入ってきたのはカインくん。


その後ろには恭くんが立っている。



「大丈夫ですよ。わたしもついさっき来たばかりですし、退屈してなかったので」



むしろゆっくり考えることもできたからよかった。


みんなでお弁当を食べる。


その間にもカインくんがいろいろ話しかけてくれて、すごくにぎやかな時間だった。








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