不純な理由で近づきました。



まぁ、一理あるといえば、あるような。



染めたことのない真っ黒な髪は切るのが面倒なのでそのままで腰まである。


前髪も目にかかるぐらい長くて、おまけに黒ぶちのメガネをかけている。


まぁメガネはダテですが。


自分で言うのもなんだけど、地味な部類に入ると思う。


それはもう確実に。


校則の緩いこの高校で、わたしのような人の方が異質らしく、友達もいない。


一人は好きだからいいんだけどね。



本から目をあげると、王子様みたいな笑顔で女の子に挨拶を返している枢くんの姿が目に入る。


その隣には不機嫌そうな一ノ宮くんの姿。



……そういえば、一ノ宮くんの声って聞いたことないかも。


よくよく思い出してみるけど、うん、やっぱりない。


話してるところは……たまに見る、かな。


でもそんなに大きな声で話してるわけじゃないから、やっぱり聞いたことはない。



……気になるなぁ。


これは人間のサガだよね。


だって気になる。


じっと見ていると不意に目があって慌てて本に目を移す。


それから何故か視線を感じ、ソワソワしてしまい。


でもちょうどいいタイミングで担任の先生がきて、今日の一日が始まった。





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