不純な理由で近づきました。
うわぁ、顔が心なしか熱いような。
「かっ、過大評価しすぎなのでは?」
「あ、照れてる。この二日で分かったけど、白崎って意外と表情豊かだよな」
「そ、そんなこと初めて言われました……」
うん、嬉しい。
最近嬉しいこと続きで逆に怖いなぁ。
これ以上わたしが赤面してしまいそうな言葉を言わせないように、わたしは目的地の古本屋さんに急ぐ。
「あ、ここです」
へぇ、という恭くんの声を背に、わたしは少し古い扉を押す。
それに合わせてチリン、と小さく鈴の音が鳴った。
ふわり、と鼻をくすぐるのは古い本の甘い香りと紅茶の香り。
この空間が落ち着くんだよね。
「こんにちは」
声をかけて入ると奥から男の人が出てきた。
わたしを見て少し目元を柔らかくさせる。
それがこの人なりの笑顔なのかな、とわたしは思っている。
「……いらっしゃい」
「はい。こんにちは、梓さん」
少し微笑んで梓さんを見ると、梓さんはわたしの後ろを不思議そうに見ていた。
と言っても、ほとんど表情は変わらないんだけど。
それを見分けられるのは、多分父さんの影響かな。
父さんも寡黙であまり表情を出さない人だから。
「梓さん、紹介しますね。同じ高校で友人の一ノ宮 恭くんです。
恭くん、こちらはこのお店の店長さんの宮野 梓(みやの あずさ)さん」
どうも、と恭くんが言ってお互い軽く挨拶を交わす。
……どことなく似てるな、この二人。
ふふ、と笑みをこぼすと不意に梓さんからの視線を感じて。
その意味を察して、わたしは恭くんに目を向けた。
それを不思議そうに見る恭くんに笑みを浮かべる。