不純な理由で近づきました。




「わたし、いつもここで紅茶を飲んでいるんです。
恭くんって紅茶大丈夫ですか?」


「大丈夫だけど……ここって喫茶店もしてんの?」


「紅茶はサービスです。ね、梓さん」



こくり、と頷く梓さんを確認してから恭くんに視線を戻す。



「じゃあ、いただきます」



と言ったものの、その姿がどこか遠慮した様子で。


ふふ、とやっぱり笑ってしまいそう。



「何がいい、とかリクエストってありますか?」



特にない、と言う恭くんに代わって、わたしは梓さんにダージリンを頼んだ。


梓さんの後ろ姿を見て、わたしは恭くんと一緒に定位置であるテーブルに座る。



「こんな近場に、こんないい店があったんだな」



恭くんは周りを確認するように視線をさ迷わせている。



うーん……偏見かもしれないけど、イケメンってこういう感じしないからやっぱり笑えてしまう。


面白いとかそういうのではなくて、所謂ギャップというか、微笑ましいというか。


わたしと同じ高校生なんだな、と思う。



「中学のときにたまたま見つけて、そこから常連さんなんです、わたし。
雰囲気とか、すごく気に入ってしまって」



ちょうど梓さんが紅茶を持ってきたので頭を下げる。


ふわり、とダージリンの香りが辺りを包んだ。


一緒に置かれたクッキーを見て顔を上げると、少し目元が柔らかくなっていて。


多分、これもサービスかな。


梓さん優しいから、たまにケーキとかもくれて。


微笑んでお礼を伝えると、梓さんは奥に行ってしまった。


相変わらず照れ屋な人だな、と思ってわたしはダージリンに口をつけた。








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