不純な理由で近づきました。




「おはよう、六花ちゃん」


「おはようございます。カインくん」



本を閉じて声の方を見れば、すっかり夏服になったカインくんと恭くんが。


夏服になって爽やか度が上がったのは気のせいではないだろう。



「恭くんもおはようございます」


「おはよ」



そのまま朝の時間を三人で過ごした。


話の内容としては今日も暑いね、とか早く夏休みにならないかな、などと他愛のないもの。


それでも恭くんとカインくんだからか、こんなことでも楽しいと思える。


不意に視線を感じたような気がして。



「どうした?」


「あ、いえ、」



気のせい?


朝のことがあったから、ちょっと気を張ってるのかもしれない。



「なんでもありません」



そう言えば二人はそれ以上深くは聞いてこなかった。



……うん。きっと気のせい。


自意識過剰なだけ。


そう心の中で呟いて、わたしは二人に笑顔を向けた。



けど、このときのものは気のせいでもなんでもなくて。



次の日も、その次の日も、俗に言う嫌がらせのようなものは地味に続いた。


ある日は机の中に『二人と仲良くするな。さもなければ大変なことが起こるぞ』的な手紙が入っていたり。


ある日は教科書が破けていたり。


またある日は体操服が汚されていたり。



………ベタすぎる。ベタすぎてどうしよう。


嫌がらせだから、わたしに何かしらのダメージを与えるのが目的なんだろうけど。


……すみません。自分でも残念なことにダメージは皆無。


これはダメージの受けていないわたしに、なんとかしてダメージをくらわせようとヒートアップする、という王道パターンになるのでは……


仮にそうなったとしても、なぜかそういう場面が想像できてしまうあたり、たいしたダメージにならなさそうだ。






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