不純な理由で近づきました。




ところどころを聞きとると、


『お前なんか二人には釣り合っていない』


『お前のせいで二人は迷惑している』


『ブスが二人のそばに寄るな』


などなど。



見事なまでの罵倒っぷりに、呆れを通り越して感心してしまった。



そろそろ三十分ぐらい経ったのかな。


女の子たちの話も聞かず、帰りたいな、なんて考えていた罰だろうか。



「、!?」



いきなりグッと頭に痛みが走った。




「アンタ、調子乗ってんじゃないわよ?」




ゾクリ、と皮膚が粟立つような冷たい声。


怖いと、思った。



調子なんて乗ってない、と言いたいけど痛みとさっきの恐怖で言うことができない。



「ぃ、痛い……離してっ」



そのままズルズルと髪を引っ張られてどこかに連れていかれる。



どうしよう……


こんなことになるなんて考えていなかったから、ケータイはカバンの中。


助けを呼ぼうにも周りはわたしが見えないように囲んでいて。


その上放課後だから人も少ない。


多分、ここで声をあげたとしても誰も気づかない。


それどころかここにいる人たちの機嫌を悪くしてしまうかもしれない。


頭の中は、どうしようかとプチパニック状態。



「、きゃ!?」



急に頭に感じていた痛みが消えて、その代わり強く背中を押される。


一瞬息もできなくなるほどの衝撃を受けて、わたしはそのまま倒れ込んでしまった。


かけていたメガネが外れて、カシャンと音をたてて地面に落ちる。


慌てて手を伸ばしたけど、それよりも前に誰かがメガネを踏み潰した。


グシャリ、とメガネのフレームが歪み、レンズが割れる。



その場面に、血の気が引いた。








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