不純な理由で近づきました。




「ぃ、や……」



怖い……怖い………



「ふん、不様ね」



上から降ってきた高圧的な声に体が震えた。



どうしよう……怖くて体が動かない。力が入らない。



自由に、ならない。


視界がクリアで、わたしと世界を隔てるものが何もない。



怖い……怖い………




「しばらくここで、自分の愚かさを感じていればいいわ。
そして自分がどうすればいいのかを考えなさい」



ふん、と傲慢な笑い声が聞こえたかと思えば、耳に入ってきたのは扉を閉めるような音。


次第に差し込まれた光の線が細くなっていく。



「い、いや……、閉めないでっ」



震える足を動かして扉に向かうけど、無情にも扉は閉められて。


力を入れても扉はびくともしない。



「お願いっ、出して!!」



叩いても返ってくるのは笑い声。


それもどんどん遠くなって聞こえなくなる。



待って…お願い………一人にしないでっ



カクン、と膝の力が抜けた。



「ど、しよ……」



わたしは震える自分の体を抱きしめるように小さくなる。










わたしが、目が悪いわけでもないのにメガネをかけているのはちゃんと理由がある。


メガネをしていないと、わたしは人の視線が怖くて外に出られない。


家族や親しい人とならメガネがなくても話せる。


でも、それ以外の人とはメガネを介してしか話すことができない。


メガネをかけていれば、それはどこか現実味を帯びなくて。


例えるならテレビを見ているように、周りを客観的に見られる。


だから大丈夫。


でも、わたしとこの現実を隔てるものがないと、怖くてたまらない。


おまけに、関連したトラウマで暗いところがダメで。







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