不純な理由で近づきました。




それにしても、



「恭くんには迷惑かけちゃったなぁ……」



閉じ込められちゃったのを助けてもらい、いきなり目の前で泣いたかと思えばすがりつき。


あげくの果てに、わたしが兄さんに拾ってもらうまでの世話すらしてもらったなんて。



あぁ……もう、申し訳なさすぎる。



「恭くんって、あの一ノ宮ってやつ?」


「うん」


「ふーん……」



…………?


なんか兄さん、不機嫌に見える。


何か嫌なことでも、って、わたしと一緒にいるときに兄さんが不機嫌とかってあんまりないんだけどな。


少し温くなったミルクティーを口に運ぶ。



「その一ノ宮って、六花の彼氏なワケ?」


「んぐっ!?げほっ……」



むせるわたしに兄さんは至極真面目な顔をしていた。


……質問はかなりふざけたものだったけど。



「……兄さん。どこからそんな質問が浮かんだの?」


「だって名前で呼んでるから」


「名前で呼ぶ人なんて他にもいるよ」



実際カインくんだって名前で呼んでるし。


それを言うと更に面倒なことになりそうだから言わないけど。



「恭くんは友達だよ。ヘンなこと考えないで」



分かったー、という兄さんのかなりの笑みを浮かべた顔。


そんなに妹に彼氏ができないのが嬉しいのか。


どれだけのシスコンなんだか。


はぁ、と息を吐いて残りのミルクティーをに口をつけた。




軽快な音楽がわたしと兄さんの間に流れる。


多分兄さんのケータイだろうな、と気にもしなかったけど。



「兄さん、出ないの?」


「なんで?」


「なんでって……」



さっきから鳴ってるんですけど……







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