不純な理由で近づきました。




切れては鳴ってを繰り返して三回目なんですけど。


あ、今四回目……



「せっかく六花とデートしてるってのに、それを邪魔するような電話は、」


「出ろ」


「えぇー」


「出なさいよ」



早く、と言うわたしに苦い顔をする兄さん。


仕方ない、とわたしはニッコリと笑みを作る。



「金輪際、一緒に買い物行かないよ?」


「……出ます」



渋い顔をしながらも通話ボタンを押して、しばらく相手の話を聞いている兄さん。


その顔はだんだんと暗くなっていき。



……そんなにまずい話だったのかな。



「あぁ、分かった」



そう言ってケータイをしまい、兄さんは長く長くため息を吐く。



「兄さん?」


「あぁー……くっそ、ナルの野郎」



と、いうことは仕事絡みかな。


ナルちゃんも可哀想に……もとはといえばわたしのせいではあるけど。


きっと兄さん、ほとんど無理矢理仕事を休んだに違いないし。



「行こう兄さん。仕事は疎かにしちゃダメだよ」


「……ちっ」



舌打ちって……


わたしも兄さんも同じ家に住んでいるんだから毎日顔を合わせているのに。


どうしてそこまでデートにこだわるんだか。



まぁ不機嫌でもちゃんとわたしの言葉に従うところは素直というかかわいいというか。


これもシスコンの成せる技なのかなぁ……



「すぐ車来るって」



という兄さんの言葉とともにわたしたちの前に止まった車。


タイミングがよすぎる。



「きたよー」


「もっと遅くこいよ」


「トモがもっと早く電話とってたら遅かったと思うよー」



それってただ待つ時間が増えるってだけで、時間的には変わらないよね。


口には出さないけど。







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