不純な理由で近づきました。
「じゃあ兄さん、仕事頑張ってね。ナルちゃんも」
「何言ってんの。六花も来るの」
「……え」
「ほら」
「ちょ、」
バタン
……拒否の言葉を口に出す前に車に押し込められてしまった。
て、え。これいいのかな?
仕事につれてくるとかありなの?
「大丈夫だよ。すぐ終わると思うから」
わたしの心を読んだかのようにナルちゃんがそう言って。
んー、だったら安心だけど。
「なら明日でもいいだろうが。
なんで今日なんだ。
なんで今なんだよ。
なんで六花と一緒にいちゃらぶしてるときなんだ!?」
「兄さん、誤解を生むような言い方やめてよ」
「あは、シスコンがそこまでいくともはや"微笑ましい"を越えてキモイよねー」
この言葉が効いたらしい。
仕事場に行くまでの車の中、兄さんはあからさまに肩を落としていた。
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「トモー、着いたよー」
静かに駐車場に車を止めて、ナルちゃんが振り返る。
それでも動かない兄さん。
いい加減に機嫌を直してほしい。
ナルちゃんも苦笑ぎみですよ。
………仕方ない。
「兄さん」
「……六花」
しょぼん、としている兄さんに笑顔を向ける。
「今度、時間があるときまたデートしてあげるから、」
「よしっ、行こう」
さっきとは打って変わって兄さんは上機嫌で車を下りていく。
心なしかあたりにお花が漂っている。
もう……
「単純だねー」
うん、そうだね。ナルちゃん。
我が兄ながらそう思うよ。