不純な理由で近づきました。




微苦笑を浮かべながらも、わたしとナルちゃんは兄さんの後ろをついていった。



「おはようございますTOMOさん」


「おー、はよ」


「呼び出してすみませんっ!」


「いいよいいよ、で?
例の衣装は?」


「こっちです!」



入った瞬間この忙しさ。


改めてだけど、兄さんがここでどれだけ頼りにされているのかが分かる。


いつも家の様子とか、ナルちゃんに蔑ろにされている兄さんが脳内にインプットされてるからかな。


わたしから見ると違和感が……


いや、いざというときはものすごく頼りになる人っていうのは分かってるんだけどね。



「うーん、思ったより時間かかりそうだねー」


「うん」



まぁ、たまにはいいと思う。


こういう兄さんも見ていて楽しいし。



「りっちゃん、こっちおいで。お菓子あるよー」


「あ、じゃあいただきます」



さっきパンケーキ食べたばっかりではあるけど。


こういうところって、わたしが買えないような高級お菓子が置いてあるから、食べなきゃ損……だよね。


うん、そうに違いない。


と自分を納得させて早速クッキーに手を伸ばす。



兄さん、ほんと忙しそう。


仕事たまってる、みたいな話は最近聞かなかったんだけどな。


あ、でも新作とか新しい企画とかあるんだっけ。


忙しいのはそれのせいか。



「ナルちゃんは仕事いいの?」


「んー、オレはトモの仕事が終わってからがメインだからね。
今日は衣装のことだけだからオレはいーの」


「そうなんだ」









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