不純な理由で近づきました。
ナルちゃんは主に兄さんとコンビ(?)で働いているメイクアップアーティスト。
もともと二人、小さなころからいろいろしてたなぁ。
それこそわたしを人形にして服を作ったりメイクを施したり。
いい思い出というか、悪い思い出というか……
まぁ最初のころから二人は才能を開花させていましたからいい思い出なのかな。
つまりはまさに、言葉通り人形のように綺麗にされていた。
と言ってももとがこれだからせいぜい中の中が上の下になったぐらいだけど。
こればっかりは腕があってもどうしようもないよね。
「そーいえば、昨日大丈夫だった?」
「えっ?」
あからさまに動揺してしまうわたし。
昨日、って……わたしが気絶したこと?
どうしてナルちゃんが……
「トモがね、りっちゃんに電話したときオレも一緒にいたの。
で、ちょーど車で来てたからタクシーにされた」
うっ、兄さん、なんてことを……
「倒れたって聞いてびっくりした。
りっちゃん……やっぱり、まだメガネがないと怖い?」
ドキ、と心臓が嫌な感じに跳ねる。
小さなころは、メガネなんてなくても大丈夫だった。
でも……あることがきっかけで、わたしはこの世界が。
見られることが……怖くなった。
一時期は家さえ出ることができなくなるぐらいで。
それを改善してくれたのが兄さんとナルちゃん。
二人のくれたメガネが、わたしをもう一度外に出る勇気をくれた。
メガネがあれば、それはわたしと世界を、現実を切り離してくれる。
自分自身を客観的に見ることができる。
テレビと同じ。
そこはリアルじゃなくてフィクションの世界。
だから……わたしはメガネを手離すことができない。